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James Powlick / ジェームズ・ポーリック

腐海ホンダ・アコードSEA CHANGE (C)1999古賀弥生訳 徳間 2001

『ガーナーとエリーとキャロルが消防署のホールを出るころには、外はもう暗くなっていた。さまざまな車が駐車場から散っていくあいだに、三人は海洋研究所に向かって歩き始めた。エリーは、ポート・アルバーニから森林道路を十マイルも行かないうちに、ホンダの車軸の後部ボルトが抜け落ちてしまったの、と説明した。残りの道のりはバンフィールドのよろず屋の店主の車にヒッチハイクで乗せてもらわなければならず、いまでは彼女はこの町に立ち往生していた。歩きながらキャロルはせめて一晩泊まっていらっしゃいよと誘い、ガーナーは海洋研究所を案内してあげようと言った。
 四分の一マイルほど行ったとき、ブチャードの乗ったBMSのピックアップトラックが追いついてきた。チャールズ・ハーモンが助手席に乗っていた。 「乗っていくかい?」ブチャードはあいている窓から呼びかけ、空っぽの荷台を指さした。 「誰が乗るもんですか」キャロルが言うと、ブチャードは肩をすくめ、ピックアップを発進させた。三人が見守るうち、テールライトは砂利道の角を曲がって消えていった。
「これもまた組織化された環境保護主義に対する打撃ね」キャロルは言った。「"組織化"というにしてはお粗末だけど。環境保護運動がスーツを着て、てんでにやっている活動を調整するようにならなければ、いつも経済が勝つんでしょうね」』
--COMMENT--
 海洋生物学の学者である著者が、人間を含む生物を襲いだしたした原生プランクトンの異常繁殖体フィステリアの恐怖を描いた海洋サスペンス。このようなことが現実に起こりうるのかどうかかなり疑問ではあったが、環境保護派と漁民の対立、フィステリアを食い止めるための戦いが迫真のタッチで興味深かった。
 引用は、ポート・アルバーニの病院の医師エリーが現地の会合に参加したときのシーン、彼女の車が<ハンガーがラジオのアンテナ代わりになっていて、フェンダーのほとんどがすっかり錆びてガムテープが貼ってある十年前のアコード…>、コロニーの止めをうつために派遣される原子力潜水艦の女性艦長の"ブルーのサバーバン"など。(2007.5.3 #475)


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