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SERLING, ROBERT J./ロバート・J・サーリング

タイタニックに何かがメルセデスSOMEHING'S ALIVE ON THE TITANIC, (c)1990早川,1992

『レファーツは24時間体制でお抱えの運転手を揃えている癖に、ほっそりとしたグレーのメルセデスを自分で運転していた.レファーツに言わせれば、運転をしているときの方が物事をよく考えることが出来ると言うのだ.ホークはその言い分を不幸な事実として受けとめていた.レファーツは運転よりも考えごとのほうに気を取られているように見えたからだ.
 レファーツの今日の運転ぶりはそれほどひどいものでなく、今までのところ赤信号を一回無視しただけだった.ところが今ではまるで放心した表情になって、今度の遠征に女性が加わることになるかも知れないと言う可能性について考え込んでいる様子だった.深く考え込めば込むほど運転はますます下手になった.やっと会話が再開され、レファーツが両手を使って運転し始めたときには、ホークはほっとした.
「その女に君が会うことになっているのはカリフォルニアのどこかね?」「サンディエゴのスクリップス研究所だ.あんたがわたしをホテルに送り届けてくれ次第、電話をかけて約束をとりつけるつもりだ.」』
--COMMENT--
『機長席』,『大統領専用機行方を絶つ』,『明日への滑走路』,『男達の翼』などこれまで航空小説を書き続けてきたサーリングが一転して,沈没したタイタニックから財宝を探し出す試みと、それにまつわる超自然現象を追う海洋冒険作品を手がけた.
  一部荒削りなところもあるが、1912年4月14日、氷山との衝突で沈没してから1985年アメリカのウッズ・ホール海洋学研究所のバラードが初めて沈没位置をつきとめ貴重なデータを得た事実をそのままストーリーにとりこむなど、とてもフィクションと思えない迫真のタッチはなかなかのもの.92年のミステリーベストテンに必ず入るんではないかな? それにしてもタイタニックは謎に満ちているんですね.(93/01)


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