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SOLOMITA, STEPHEN /スティーブン・ソロミータ

栄光のためでなくフォード・エアロスターLAST CHANCE FOR GLORY , (c)1994TBSブリタニカ,1994

『マーカス・フレッチャーの態度には嘘はないように思えた。フレッチャーの目の輝きは、計算ではなく貪欲さから出たものだった。物腰は率直ですがるような腰の低さがあった。とはいえ、フレッチャーに車を見られた事を無視する訳にはいかない。検事補が車のナンバーを記憶して、すでにサミュエル・ハーラーに注進に及んでいる可能性もあるのだ。
 そのことを念頭に置いて、ブレークはカプリスを乗り換えるためにケネディ空港へ向かった。めざす車は空港周辺の小さなレンタカー営業所で見つかった。サトフィン・ブヴァードの埃っぽい駐車場の奥に並ぶボトムライン・レンタルズの中古車は、大手レンタカー業者が貸し出すぴかぴかのセダンとは雲泥の差があった。レンタル料金も格段に安かった。ブレークは1991年型のフォード・エアロスターを選んだ。両サイドには一枚ガラスがはめられ、リアウインドーにルーバーを渡したヴァンは、傷だらけのおんぼろ車だったが、道路で目だたないところがうってつけだった。
 ヴァンのエンジンをかけたとたん、ラジオが鳴りだした。ブレークはニュース専門のWINSにまわし、そのままウッドサイドのバーネット・アヴェニューに向かった。彼はベル・コシンスキーが死亡したニュースが流れるのを待っていた。ところが、深みのある男性の声が告げたのは、マンハッタン区長エドワード・グリーンの訃報だった。』
--COMMENT--
 ニューヨークの調査会社の調査員ブレークが復職して任されたホームレスの若者の冤罪を晴らす仕事で区長、警察幹部に立ち向かう。初めて出会った作家ではあるが、しっとりとしたNYの独特の息づかい、パートナーとなったアルコール中毒で警察をクビになったコシンスキーとの男の友情などなかなか力量を感じた。 上記のほかにも、88年型のトヨタ・カローラ、ニッサンのレンタカーなどが登場してくる。(95/01)


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