STABENOW, DANA /ディナ・スタベノウ
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白い殺意 | ランドクルーザー | A COLD DAY FOR MURDER, (c)1992 | 早川書房, |
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『「ジーニアに聞いたんだけど、ミラーは行方不明になった夜、ここにジープを置いていったんですって?」
「ああ。まだ裏に停めてあるよ」バーニーはにやりとした。「その残骸が。見てみるかい?」
ケイトはスノースーツを着込み、マットを脇に従えて、バーニーのあとについて表にでた。先刻より戸外の気温が低くなっているのが感じられた。吐く息が白い煙のように顔の横を流れていく。ケイトはフードをかぶり、襟元をかき合わせた。
マーク・ミラーが残していったジープ、トヨタのランド・クルーザーは、地上高がたっぷりしていて、小回りがきき、しかも四輪駆動という点が評価されて、公園内では人気の車種だった。そのことを考えれば、ミラーのジープから、4本のタイヤがすべてホイールごとなくなっている理由も説明がついた。また、スペアタイヤ、バッテリー、スパークプラグ、フィルター、ディストリビューター、キャップ、バケットシート型の座席ひと席ぶんフロントグラス、運転席のドアがなくなっている理由も。
「残り物には福はなさそうね」とケイトは言った。
「こんなとこに放置して、鉄屑の冷凍をこしらえたって、屁の突っ張りにもならない。まあ、頭のいいやつのすることじゃない8な」バーニーは嬉しそうに言った。』
--COMMENT--
アラスカ州生まれの女流作家のケイト・シュガックシリーズの第1作。主人公は元アンカレッジ地方検事局の捜査官で、アラスカ先住民のアリュート人入植地での事件を追う。極北の原野や大自然を背景としていきいきと描いており、仕立ては近ごろ珍しい完全な冒険ミステリーとなっている。車は当然、ランクルとなり、他には各種のスノーモービルが登場する。スノーモービルもちゃんとブランド名で呼ばれていてさすが!(95/04)
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