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>Stone, Michael /マイクル・ストーン

誰もがそれを狙ってるビュイック・ベルヴェデーレほかTHE LOW END OF NOWHERE (c)1996三川基好訳 早川書房,1998

『ストリーターはそんな風に物思いにふけり、トレーニングの方がお留守になってきた。彼は今夜はこのくらいにしようと思い、1時半頃切り上げた。ガレージに出てくると、灯りはひとつもついていなかった。彼のずんぐりとした、茶色の1979年型ビュイック・ベルヴェデーレは、ラバのような車で、彼が仕事でいく場所ではたいていうまく周囲に溶け込んだ。今、車は大きなステンドグラスをはめた窓から射し込む街灯の光りを浴びている。ストリーターが考えていた、相手の警官たちはどこまでやるつもりだろうかという問題に、おのずと光りが投げかけられることになった。
 銃声は大きいが、遠く聞こえた。357か44口径だ、ストリーターは判断した。ガレージの背の高い窓のひとつを弾丸がニ発突き抜けるのが見えたと、彼は誓って言えると思った。20フィートほど離れたところで、そのうちの一発が跳ね返るのが聞こえ、最後はビュイックに当たったような音がした。 』
--COMMENT--
 またまた早稲田の文学部助教授の三川さんの訳書がでて、さっそく手にしました。初めて出会う作者の賞金稼ぎ探偵ものだったのですが、タフで好感のもてる登場人物、ポップでしゃれた会話、テンポのよいプロットなど、とても魅力あるミステリーでした。舞台となるデンバーの土地柄もしっとり伝わってきます。R.B.パーカー風かな・・・。
引用にでてくるビュイック・ベルヴェデーレ以外にも、事件のきっかけになる麻薬ディーラーのポルシェ、チャーミングな広告代理店の女性経営者のアウディ、弁護士のセカンドカーのコルベット、秘書のターセル、警官のニッサンなど、たっぷりと車がでてくるのも楽しみ。こんなせりふもありました。「・・・ストリーターは彼女をパトカーのところまで送っていった。新型の白い車だ。個性のない、流線型のボディ。滑り止めのないコンドームに、でっかい銃弾を入れたみたいだ。彼はそんな無趣味な車が嫌いだ。・・・」(98/02)


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