SWIFT, GRAHAM ／グレアム・スウィフト
| ラストオーダー | Sクラスの380 | LAST ORDERS (c)1996 | 真野泰訳 中央公論 1997 |
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『Sクラスの380。それがこいつだ。V8のオートマチック。七年目になる中古車だが、二百キロだしてもふらつかない。もっともこのニュー・クロス・ロードじゃ出しようもないが。
塗装は特注、内装は全部本革。
なんだからフセインも早いところこいつを買いやいいんだ。現金で。買ってもらわなくちゃな、ほんとに。でなきゃ、こっちが現ナマを切らしちまう。
ほしいと頼んでそれが手に入るなんてのは、男の一生で死ぬときだけって気がするな。もっともSクラスのベンツはジャックに頼まれたわけじゃないが。ホイールベースが特別長くって、ダッシュボードはクルミ材ときている、Sクラスは。だからこいつのよさ、ジャックがほんとにわかってくれるといいんだが。ほんとうにわかってくれるとね。
タイヤは側面の白いやつをはいている。左前の空気圧が少々足りない。』
--COMMENT--
題名にひかれて手にした1996年度ブッカー賞受賞の英国作家の純小説。亡き友ジャックの最後の願い（ラストオーダー）を叶えるため、四人の仲間がロンドンからマーゲイトの海にいくのに使った車が、このロイアルブルーのベンツであり、出発してから100キロほど走り、灰をまいて終わりになる奇妙な作品でした。ドライブの間に、それぞれの回想が交差するが、なにか、ほっとするような人生の温かさを感じました。(98/05)
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