THOMAS, CRAIG /クレイグ・トーマス
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高空の標的 | ニッサン | THE LAST RAVEN, (c)1990 | 新潮,1993 |
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『ハイドは駐車場をしっかり見渡した.顔を出したばかりの太陽が、車のクロームやガラスを輝かせている.車しかない駐車場は、丸見えの広がり.ハイドはその無防備さを再び強く意識し、身を震わせた.
「俺のために借りたという車はどこだ?」
マロリーは車の鍵を、ついでエイヴィス社の書類の入ったフォルダーを手渡した.そして、車の列を指差した.
「ブルーのニッサン、わかるか?」
「ああ」
「彼女はカレン・アンダースンという名で泊まっている.モーテルの名前はダルマ・ロッジ.いかにもという名前だ.グローブ・ボックスのなかの地図に印をつけておいた.オーケー?」
ハイドは航空会社のバッグをひったくるようにして取ると、歩き始めた.ブルーの小さなニッサンまでたどり着くと、ハイドは鍵を差し込んでドアを開け鞄をバックシートに投げ込んだ.
ドアを閉めると、駐車場がまたしても自分を拒否する嫌な場所に思えてきた.
窓を開けた.朝の空気はすでにきらめいているが、まだほんの少しひんやりとしている.深呼吸をはじめ、呼吸を整えようとした.そうやって気分を落ちつけようとする.が、一向に効き目はない.』
--COMMENT--
英国秘密情報局の工作員パトリック・ハイドが、CIA狂信グループから追われ誰も信じられない極限状態のなかで、旅客機墜落事故の謎に迫る.上記は到着したサンフランシスコ空港でのシーンであり、ニッサンといえば、マキシマあたりかなと思いますが?
原題のTHE LAST RAVENは「最後の烏」という意味で、ハイドのことを指し示している.(93/04)
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