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Fred Willard /フレッド・ウィラード

ヴードゥー・キャデラックエルドラドPrincess Naughty and the Voodoo Cadillac (c)2000黒原敏行訳 文春 2003

『レイは実利的に頭を働かせる達人だ。心配や恐怖が頭に浮かぶと、冷静さが戻ってくるまで、まるきり違うことを考える。
 今朝は愛車のことを考えた。ヴードゥー・キャデラックは4年前の年式のエルドラドで、安かったのは、死の呪いがかかっているとと噂されていたからだ。
 おれによくにた車さ、とレイは好んで人に言う。弾痕の修理跡がいくつもある、人に恐れられている、死ななくてもいい人間を何人も死なせている。
ヴードゥー・キャデラックにまつわるのはこんな話だ。前の所有者が、誰かに迷惑をかけるでもなくラルフ・マギル・アヴェニューを流していると、ギャングスターの悪名高い一員が、運転席の窓越しに9ミリの拳銃で6発撃ち込んだ。運転手は即死、車は横滑りして電柱にあたり停止した。不幸にもこの事故のせいで、スネルヴィルから<アトランタ・キリスト受難劇>を観にきた信心深い一行のバスが道をそれてよこざまに三度転がった。…中略…
 レイ・ジャスタスとして人生をおくるのならユーモアのセンスは欠かせない。呪いの伝説が街のチンピラどもをびびらせるのであれば結構なことだ。』
--COMMENT--
 タイトルがこうだと、ちょい見で難がありそうでも読むことになります。アトランタのワル二人と彼女―原題のPrincess Naughty ―が横領されようとしていたCIA秘密資金を横取りしちゃうというコミック・クライム・ノヴェルといったところ。2-5ページぐらいで場面が変る細切れチャプターというパルプ・マガジンの造りになっていて読みやすいんだけど、荒っぽいストーリー展開にはなかなかついていけません。
 CIA秘密事務所の"黒いリンカーンの胴長リムジン"、小悪人ピーナッツの"古い茶色のホンダ"、レイの彼女の"くたびれたオレンジ色のターセル"、自分で運転したことがない実業家の最高級BMW…など。なんと懐かしいターセル登場は、ジョージ・P・ペレケーノス『魂よ眠れ』以来で、同書でも"おんぼろトヨタ・ターセル"となっていて残念ながらボロ車の代表の一車だ。 (2007.5.26 #479)


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