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WILTSE, DAVID/デヴィッド・ウィルツ

破壊の黙示録青のフォルクスワーゲン・ゴルフBLOWN AWAY (c)1996汀一弘訳 扶桑社1998

『ペギーンの車は出口ランプにさしかかった。彼女が通過するなり、クライスラーが急にバックしてランプを横断し、舗装道路のうえに横ざまに停止してペギーンの後方を遮断した。ペギーンは後方出口が不意に封鎖されたことも気づかなければ、運転手がランプ出口の停止標識に向かって走り出したのも見なかった。
ペギーンは停止標識の手前で停止した。前にいる明るい青のフォルクスワーゲン・ゴルフのすぐうしろについた。運転手が車を降りてペギーンのほうへ近づいた。ペギーンは男が髪と口髭を染めていることを見て取った。なんとなく見覚えのある顔立ちだ。彼はほほえみかけながら、ロックのかかった助手席のドアを開けようとし、窓ガラスをこつこつと叩いた。
「ロビン、ぼくだ」男はなおも微笑んだまま、声をかけた。』
--COMMENT--
 メールをもらったnakaharaさんから薦められたウィルツのクライム・ミステリー。FBI捜査官ジョン・ベッカー・シリーズの第4作で、ニューヨーク当局をうらむ爆弾魔を追跡する。扮装した女性捜査官ペギーンが、ベッカーの指示に背いて初めて犯人と接触する山場が上記のシーン。この作品を見る限り、ペギーンのほうがキャラクターもはっきりと、また好ましく描かれていて、主役のベッカーのお株を奪っているかな。犯人と取り巻きのマフィア、ちんぴらとFBIスタッフなど多くの登場者に多様な人物模様が描かれている点が興味深い。犯人は化学を専門とする大学院生だったことで、ワーゲン・ゴルフはぴったりの設定。この本の前に読んだウィルツ「わが故郷に殺人鬼」(Home Again,1986)と比べると、やはりずっとプロットがうまくなっていると思う(1999/02)


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