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Wood, Christopher /クリストファー・ウッズ

ダイヤの戦場ホンダセダン、トヨタセリカKAGO, (c)1985早川,1989

『ロッド・マリィは、ホンダのサルーンを降りて、ドアを思いきり閉めた。もう一度力いっぱい閉めると、今度はちゃんと閉まった。彼の目の前には、ブリスベンの“ノーザン・サバーブス・ラグビー・リーグ・クラブ”のグランドがあった。
湯気をあげている密生したジャングルに囲まれた、草のはえた窪地。ハイビスカス、エリスリナ、イエローシャワーにまじって、ホウオウボクが燃えるような色をちらちらさせている。』・・・・
 『ロッドは、女の引き締まった尻をポンと叩いてから、古ぼけたホンダにむっかた。「それじゃ、またな」 女が横に並んだ。「何であんな車に乗っているの?」 「車ってやつは、乗るためにある」
「なにいってんのよ。送ってくれないつもり?」 「方向が違う」ロッドは、ドアのロックをあけた。「どこに住んでいるか知らないくせに」 「すぐなびくところを見ると、どうせセント・ルーシアあたりだろう」 「なによ!あんただってたいした男じゃないわ」
「きのうの晩いったこととは違うな」車のドアをバタバタ開閉して窓をあけた。フロントシートは、あひるを丸焼きにできるほど熱くなっていた。
「あれは嘘よ」
ロッドは運転席について、ドアを閉めた。触れれないほど熱している。「そうか、そりゃよかった。じゃあ、いやな思いをしたのはおたがいさまって訳だ」・・・』
--COMMENT--
 ニューギニアの奥地を舞台としたダイヤモンドの原石をめぐる争いに登場する、オーストラリアに住むうらぶれた元ラグビー監督がロッド・マリィである。 新車のホンダであれば、学校の先生の車に適しているが、上記に引用したような状態のくるまであれば、まさにはまり役の設定ですネ。 後半の段落も、小説の中で突然でてくるので、いろいろ状況を想像してしまう楽しさがあるが、ようは、前日には、意気投合した二人の別れ際の皮肉の応酬。まったく、おたがい様ではあり、また、熱さのためロッドがドアをバタバタ開け閉めする様が、滑稽さを演出している。そんなようすに、なぜかホンダは、似合ってしまうような気がしてならない。 ダイヤモンドをねらう悪役の方の車がトヨタセリカであり、プロの元傭兵の男と女が使って登場する。(91/01)


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