区立図書館を考える走り書き通信 2号
   官製NPOは「ワンコイン地獄」
                                      2003/8/28
                                      鈴木由美子

 先日大急ぎで書いた通信を多くの方が読んでくださいました。今後も続けます。今回の目玉は「牛久市立図書館の“NPO”で働く女性にアポなし直撃インタビュー」です。

〔是綱さんも人件費では苦戦〕

 8月25日に、山梨県下でNPO図書館を作っている小林是綱さんが、中野に来てくださいました。図書館についての議論の場をつくってくださった主催者の皆さんに感謝します。私は帰省先からの帰途で大幅に遅刻したのですが、6月に池袋で是網さんのお話をお聞きしていました。
 今回、チーフライブラリアンに年270万プラス30万というお話でした。6月のお話しでは350万プラス50万を目指しておられたので、働き手の人件費では当局相手に苦戦しておられると思いました。公務労働の場では正規公務員以外の人には極度に低い報酬しか出さないのが通例。地元の名士であり「町おこしの星」である是網さんの力をもってしてもこうなのか、と思いましたね。

〔中野との違いを見つめて〕

 是綱さんの話はとても面白く、聞き手の興味をかきたて、いろんなことを考えさせてくれます。同時に、是網さんにミーハー的なファン感覚を抱く人々が、条件の違う自治体の図書館を破壊するのではないかという不安が、各所で語られている状況にあります。
 何を取り入れ、何を取り入れないか。そこを考える知性こそ、中野区民に求められるのでしょう。実際、頭上に大小の?マークを浮かべている参加者が大勢いました。
 「まだ図書館がなく人材を外に求めた小さな町と、図書館があり図書館に精通した正規非正規の職員が大勢いる大都市中野」「山梨県下の町村では、家賃が東京の数分の一」など、根本的な違いがあります。また「日に6時間勤務なら他の仕事もできる」については「在宅で文筆やIT、デザイン関連のバイトができる人などわずか、2か所以上でパートして家庭責任を負っているシングルマザーは過労ではないか」などと思いました。

 「経済的にゆとりのある人に図書館で働いてもらうといい」についても「もはや3〜40代で専業主婦は激滅しているし、50代は長男長女ばかりで介護負担も重い。東京で住宅ローン抱えている人は家計破綻の危横にあるのに」と感じざるを得ませんでした。

〔NPOに図書館サービスを委託している牛久市を訪問〕

 是網さんの会の翌日8月26日、私は土浦に仕事ででかけた帰りに牛久駅で途中下車して市立中央図書館を見学しました。カウンターで頼んだら「NPOリーブルの会」事務局のKさんが別室で説明してくださいました。

・まずNPO設立準備員として、40代後半の主婦と、会社を早期退職した50代後半の男性二人が選ばれた。
・面接もこの二人に市職員同席で行い、42名を選出。応募は400人ほど。図書館サービスの質を落とさないため適3日以上勤務でき、「平日と土日」「平日と夜間」出られる人を各世代から選出。女性は各世代いるが、男性は学生と定年後の人。有資格は二人。
・NPOの申請はこれから。1〜2年のうちに正式のNPOになり実績を認めさせて待遇も改善したい。委託費には、人件費のはかに、旅費、研修費も入っているので増額したい。実績を市当局にみとめさせ報酬1時間560円を、最低賃金以上に上げていきたい。
・リーブルの会発足と同時に、10人はどいたパートが会に参入させられた。中には10年選手もいる。新人の指導には役立ってくれたが、パート時間給800〜900円から一挙に300円減額にされている。
・職場の人員は、正規職員、非常勤司書、NPOの三本立て。

 また群馬県太田市での見聞から「太田はNPO図書館サポーターズといいつつ市が直接雇用しているので、牛久のようにNPOとして人事に主体牲を持っていない」「しかし2年間も一時間 500円で頑張って実績を挙げた結果700円以上、最低貸金以上に最近は変わった。太田はサポーターが有資格者ばかりなので市も考えざるを得なかったのだろう」とのこと。

 九州の役所は「女はタダで働かせるもの」(宮崎市)、関東では「女は500円玉一つボンと投げてやれば働く」(牛久市、太田市など)という考えでNPO設計をするが、中に入った人は人間らしい処遇を求めて運動する。しかし雇用契約ではないので、15歳の中学卒業生にも適用される最低賃金をクリアすることを目標にして長い日々を耐えねばならない。牛久と太田等の例は、役所主導のニセNPOが、住民に苦難を強いる典型でしょう。


※ この文書は、著者の許諾を得て当連絡会が掲載しています。印刷資料からOCR読込をしているため、変換ミスが残っている場合があります。お気づきの際は、「中野の図書館を守る連絡会」へご連絡ください。
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